◎いつからか相続対策は財産分割、節税対策になってしまった。
私が税理士事務所を開業して30年になります。開業当時はバブルの真っ最中、土地や株式がドンドン上がり、土地が次々と上がっていく印象がありました。
税理士事務所の仕事でも普通の会社の決算と税務申告以外に、相続対策の仕事が銀行の紹介でありました。東京に相続対策、その時は殆ど相続税対策の研修会に参加し、豊橋でも相続対策だけの仕事も結構ありました。
まだ一般の税理士さんが相続対策をしていないとき、都市銀行の支店長や次長さんと知り合いになり銀行員に研修をし、銀行のお客さんの対策をしてくれと依頼されました。
今考えると銀行さんも次々と融資をし、アパートマンションを作るように勧めていました。
相続対策もコンピューターで土地や株式がドンドン値上がりをしていくシミュレーションを行い、相続税がドンドン増えていく計算をし、そのためにはどのような対策があるかを何度もくり返しました。
その当時です、都会の自宅がドンドン値上がりをし、相続税が払えずに老女が自殺をしてしまったという事件があったのは。
この時代から相続対策は税金を如何に安くするかという事になってきました。
庶民がバブルに踊らされ、心よりもお金中心の社会に進んで行ったのです。
銀行と税理士が一体となって相続対策を勧め、相続対策の大きな柱がアパートマンションの借金による建築でした。この当時からアパートマンション建築業者が銀行と組み次々と賃貸物件を作り出し、また賃貸倉庫なども内容が分からない人まで勧めバブルを作ったのでした。
バブルがはじけてみてその爪痕はまだ続いている人もいますが、ここから相続対策は心を忘れ、財産分割、節税対策、兄弟争奪戦へと拡大をしていったまです。現在でも多くの相続対策が財産を如何に分けるか、喧嘩しない分割や遺言の書き方に重きがあるのはまさにバブルから変わってきてしまったのです。
★二宮尊徳翁の教える相続のコツ 「二宮尊徳翁夜話」より
若い者は家道をよく研究しなさい。
家道とは収入財産に応じてわが家を維持する方法のことだ。家を維持するのはやさしいようだが至ってむずかしいもんだ。まず早起きから始めて、勤倹に身を慣らすようにせにゃあいかん。それから、農なり商なり、家業の仕方をよく学ぶことだ。それをしないで家を相続したんでは、将棋にたとえれば、駒の並べ方もよく知らないでさそうとするようなもんで、さすたびに負けて、結局は失敗するのが目に見えとる。
もしやむなくこの修業ができないうちに相続するようなことがあれば、親類や後見人などすぐれた人を師として、いちいち指図を請うて、それにしたがうのがよい。
これは将棋を一手ごとに教わりながらさすようなもんで、それなら間違いはない。それを、うぬぼれて、人に相談もせず、気ままにお金をつかえば、たちまち相手に取られてしまう。父のこしらえた家を相続するのは、たとえば、将棋の駒を人に並べてもらったようなもんだ。将棋の道を知らんのに、すべて自分の思うままにさしたりすれば失敗するのはあたり前のことだ。
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