この原因としては、相続の争いが増えていることが考えられます。わたしが担当した相続税の申告でも何件かの人が遺言書を作成していましたし、関与先の社長さんからも遺言書を作成したいと依頼を受け作成のお手伝いを致しました。
その中のあるお客様の例をお話し致します。
遺言書が無効だった!!
この方は娘さんと生前よりもめていました。その為死後相続でもめないようにと遺言書を作成していました。死後、長男の方が申告の相談にこられ遺言書で相続の手続きを始めました。自筆証書遺言でしたので、すぐ家庭裁判所に検認の手続きをとりました。検認(注1)が終了し司法書士先生に遺言書を渡し遺産の名義変更をお願いいたしました。数日後司法書士先生より電話があり、「遺言書が無効で登記できません。」と連絡が入りました。原因を聞いたところ遺言書作成日が平成○○年○月吉日になっていたためとわかりました。もうそれからが大変でした。やはり妹さんともめて結局弁護士先生にお願いして話をまとめてもらいました。
このようにせっかく遺言書を作成しても、その遺言書が無効になっては意味がありません。
自筆証書遺言を作成する上で注意する点
①全文自筆で書きます。
②相続人の名前は絶対に書き間違えない。
③財産の内容も正確に記入する(不動産の住所・株式の銘柄等)。
④財産の書き漏れがあると、分轄協議書が必要になります。
そのため、「その他遺言者に属する一切の財産は、○○に相続させる」の文章は必 ず入れます。
⑤必ず日付(平成○○年○月○日)を記入します。上記の例のような吉日はだめです。
⑥遺言の執行者を定めておいた方が、執行がスムーズに進みます。
⑦自筆で署名・押印します。(実印で押印した方が確実です)
⑧封筒に入れて、押印した印で封印します。
⑨封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人の立ち会いの下で開封しますので、遺族 が遺言書を見つけたときに勝手に開封しないよう、封筒には「開封せず家庭裁判所に 持って行くこと」と書いておきます。
⑩書いた遺言書が亡くなった後に発見されなければ何の意味もありませんから、必ず 誰かに遺言書を作成したことと保管場所を伝えておいて下さい。
ほかにも注意点はあると思います。せっかく作成した遺言書が無効にならないようにするためには、出来れば公正証書遺言をおすすめ致します。
最後に、遺言書には財産の分け方だけを書くのではなく、遺言者の最終意思表示、残された家族への思い等を付言事項として必ず書いて下さい。
(注1)検認とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。
松井 稔幸