山田次郎さんは、妻花子さんと2人で小さな自動車部品製作の下請けをやって生活を行ってきました。やっと自宅のローンを払い終え、これから老後の蓄えを築いていこうとしていた矢先に次郎さんが交通事故でお亡くなりになりました。悲しみに暮れながらもやっと葬儀を終え、いざ自宅の名義の変更や預貯金の名義の変更をしようとしたとき、大変な問題にぶつかりました。
山田さん夫婦には、子どもがいませんでした。次郎さんの兄弟は3人兄弟で太郎さんは次男でした。ご両親はすでに他界しており長男が家を継いでおりました。三男の弟さんは20代にお父さんと喧嘩をして家を出て行ってしまい、それからはまったく付き合いがありませんでした。
次郎さんはまだ50代で若かったため、ご自分が亡くなるなんて思ってもいません。当然遺言書なんて夫婦二人とも考えてもいませんでした。しかし、いざ相続が発生しますと、相続の手続きに遺言書がないと兄弟全員の遺産分割協議書の署名か相続放棄の手続きをしないと、次郎さんの名義が花子さんの名義に変わらないことがわかりました。
お兄さんは、次郎さん夫婦が苦労して家を持ったことを知っていますので、すんなり相続放棄をしてくれました。ところが三男の弟さんはすでに他界しておりお子さんがいました。手紙で相続放棄の依頼をお願いしたところ、突然弁護士から連絡が入り、「これからは弁護士の私が弟さんの子の代理人になりましたので、すべて私に連絡下さい。」と、その上「相続放棄しない」と言われました。
自分たちの財産は、夫婦二人で築いてきたものです。なんで関係のない甥に財産を渡さなければいけないのでしょうか。奥さんは財産の一部を泣く泣く渡しました。
このようなことは、意外とあるのです。特に兄弟に親戚付き合いがない場合や、兄弟の当事者が亡くなり子の代になっているような場合は、関係なくても財産がもらえるなら、もらおうという人が増えています。
普段の親戚付き合いを大切にすることは必要ですが、一番良い方法は遺言書を作ることです。今回の場合兄弟には遺留分がありませんので、遺言書があれば何の問題もなく名義を書換えることが出来ました。
お子さんがいないご夫婦や、結婚をしてない方で財産がある方は、ぜひとも遺言書を作っておきましょう。若いからまだ大丈夫と言うことはないのです。
松井 稔幸