預かり保証金は経済的利益を控除する!!
この計算の時のマイナスの財産として、建物の賃貸時に預かる保証金・敷金(以下預かり保証金等と言います)があります。居住用の賃貸の多くは契約期間が1~2年ですのでそう問題になりませんが貸店舗等の場合、契約期間が長い場合があります。この場合の預かり保証金等の相続税の評価計算に注意しないといけません。多くの場合この預かり保証金等は無利息で預かります。相続税の評価方法の考え方は、預かり保証金等を無利息で預かると、その利息分の経済的利益を得ているものと考えます。従って預かり保証金等の金額からその経済的利益分を控除した金額が評価額になります。結果マイナスの財産の金額が減ってしまい、課税財産が多くなり、相続税が多くなります。
○具体的な計算式
保証金等の金額×残存期間に応ずる基準年利率による複利現価率
【例】 無利息の保証金 5000万円 賃貸残存期間20年
5000万円× 0.861 =4305万円
(平成26年9月の基準年利率0.75%で、その複利現価率は20年で0.861です)
預かり保証金等の評価が695万円(5000万円-4305万円=695万円)下がり、相続税の課税財産がその分増えたことになります。
預かり保証金等としてよく話がでるのは、土地を貸し付ける定期借地権の場合の方が多いと思います。土地の貸し付けの場合はこの評価減の計算が必要か注意しましょう。
建設協力金は割引計算をしない!!
ただし、貸店舗を賃貸するに当たり、テナントから建設費用の全額または一部を建設協力金として徴収し、工事代金の支払いに充てる場合があります。貸店舗などの場合多く採用されています。建設協力金はテナントへ返済される預かり金ですが、通常は一定期間無利息で据え置き、その後長期に分割返済されます。
預かり保証金等と似ていますが、この建設協力金は無利息でも相続税の評価は全額債務として控除できます。この違いは、建設協力金を入れた場合通常の家賃より家賃が低く設定され、無利息による経済的利益が家賃を低くすることで相殺されていると考えます。預かり保証金等の相続税評価のような割引計算はなく全額債務として控除されます。
貸店舗の預かり保証金等や定期借地権の預かり保証金等の相続税評価には、評価減の計算がある場合がありますので十分注意しましょう。
松井 稔幸