2014.11.25更新
ここで言う否認されない贈与とは、贈与税の課税の話ではありません。
贈与が正しく成立しているか、贈与と認められないとかは、相続税の税務調査時に問題となります。
相続税を申告をして何年か後に税務調査があります。
節税対策で何年もの間きちんと贈与をしていたとします。
従って贈与されたものは名義も変わっているし、当然相続税の財産の中には含まれないから、相続税の節税になったと思っています。
税務署はその贈与についてチェックしてきます。
もしそれが贈与ではなくて、名義だけ変わっているとしたら相続財産と認定し、相続税の追徴となってしまいます。
折角相続税対策の節税のために贈与したのに、税務調査で「贈与ではない」と否認されたら、泣くに泣けません。
●税務上、贈与であるとの証拠作りが大事です。
○110万円の単純な連年贈与は危険です。
一般向けの節税雑誌や銀行員の人が簡単にできる方法として、祖父母から孫に預金の名義を変更する方法か、孫の口座に振り込みをする方法での贈与を勧めています。これは少し心配です。
○税務調査の現場のことをお話しします。次の税務調査官の質問にどう答えますか。
こんな例をイメージして下さい。
・お婆ちゃんが小学校一年生の孫に、クリスマスの時にこれから毎年110万円を贈与すると、 決めました。銀行員は毎年孫名義の定期預金を作り、お婆ちゃんは大事に証書を持っていました。
孫の結婚資金にすれば喜ぶと、大事に大事に定期預金証書を積み上げていました。
◆税務署員の質問にどう答えますか。
①贈与した証拠の定期預金証書を見せて下さい。
②この定期預金証書は、いつもはどこに保管してありますか。
③定期預金を作ったときの状況を教えて下さい。
④定期預金を作ったときの印鑑を見せて下さい。どこに保管してありますか。
⑤お孫さんはこの定期預金は自分のものと思っていますか。
⑥お孫さんはこの定期預金を自由に使うことが出来ますか。
⑦毎年クリスマスに贈与していますが、これはいつ贈与しようと決めましたか。
⑧贈与税の申告はしていますか、当然申告義務はないのでしてませんね。
⑨もしお婆ちゃんの相続であったら、その返答はお父さんですよね、お父さん答えられるかな。
⑩高校生のお孫さんに質問をされたら、それもどう答えるか心配ですね。
また税務署員は、定期預金の申込書の筆跡や印鑑は直接銀行へ行って確認をします。
なぜ問題になるかは次回のブログで・・・
投稿者: 税理士法人あけぼの
2014.11.20更新
朝晩がめっきり冷えてきました。今年もあっという間に11月下旬となりました。
今年は相続税の改正前最後の年です。巷ではあちこちで相続税の話題が出ていますが、何か相続対策は行いましたか。
相続対策の最も簡単にできる方法は贈与です。
贈与税の計算は暦年基準ですから、1月1日から12月31日です。今年予定した贈与は既にお済みですか。まだでしたら是非今年中に相続対策、贈与の実施をしては如何ですか。
もし早めに多くの贈与をしたいのであれば今年中に贈与をして、次に来年の1月に贈与すればあっという間に2年分の贈与が出来、2年分の基礎控除を利用できます。
●検討したい贈与等は・・
一般の現金預金の贈与は簡単です。
これは簡単に出来ます。自分の妻や子供、そして孫達に現金を渡すか、預金通帳に振り込むか、 また定期預金証書等を子供達の名義で作るか。
贈与するだけなら簡単ですが、税務上贈与したことを立証するには少しテクニックが要ります。
この田分けブログのVol.033にも詳しく書きましたが、単なる名義を使っただけとか、実際に贈与をされたという認識がないとか、預金通帳の管理は親がやっている等で贈与として税務上認定されない場合があります。
簡単にはできますが、注意して税務上の証拠作りをしなければ心配です。
自社株や出資金を贈与
同族会社の持ち株をなるべく早めに後継者に渡しておくことは大事です。
その会社が利益を毎年出しているならば、毎年その株式や出資金の評価額が上昇します。
資本金が少なく利益が多い場合には一気に評価額が上がり、贈与しにくくなります。
現状での株価を算定してからでないと、どの程度を贈与するかが判定できませんので、早めに持ち 株の評価額を算定するなり、税理士さんに依頼して下さい。
配偶者の居住用不動産の贈与
年末だから直ぐに贈与するというわけにはいきませんが、結婚して20年以上経っていれば、奥 様に対して住んでいる不動産を贈与することは、大変節税になります。
全てを贈与すると家を追い出される心配のある方や、住宅の評価額が大きすぎ全てを贈与すること が出来なかったり、自宅が店舗や工場と一体になっていたり色々な状態の方が見えます。
その場合共有割合を贈与すると言うことも可能ですので、是非ご検討下さい。
父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与
これも年末だから直ぐに贈与するというわけにはいきません。
しかし子供や孫がもし住宅を建てる事が予定されていれば、事前に計画をしたり、住宅資金を一部 贈与してあげるから、結婚して家を建てなさいなどと話すことも出来ます。
この機会に可能性をご検討下さい。
○その他にも年内は相続時精算課税方式の贈与、贈与ではありませんがふるさと納税で特産品を貰ったり、あまりお勧めしませんが孫の教育資金を1500万円まで非課税で贈与できる方法もあります。
投稿者: 税理士法人あけぼの
2014.11.15更新
★具体的に寄与分とはどんなものか? (寄与分②)
◆民法の規定はどうなっているか・・・(寄与分) 第904条の2
1.共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
2.前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
3.寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
◆寄与分が認められるものを簡単に書けば
被相続人の事業に関する労務の提供または財産の給付、
被相続人の療養看護その他の方法により
被相続人の財産の維持または増加につき特別に寄与をした共同相続人
●具体的には色々あると思いますが、問題は相続が発生し、遺産分割の協議で揉めて、相続争いになってから「じつはあんな事、こんな事、そんな事もあった・・・」と言っても遅いと言うことです。
父親が80才で亡くなった。長男は30才から家業を継ぎ父と一緒に農業や事業を行ってきた。
事業主は父親で、長男は今55才とすると今迄25年間事業専従者として少ない給料?しか貰ってなかった。所得の殆どは父親名義の財産を殖やしてきたのです。
25年間一生懸命父親と一緒に家を護ってきた。これを寄与分と言わずして何と言うのかと思うのですが、残念ながらいざ調停や裁判では、何十年前の証拠や資料が揃えられないのです。
●だから 今のうちに何年何月にはどんなことがあったのか。農業や事業経営でどれ程の稼ぎがあったのか、年間売り上げや経費などの確定申告書も簡単に捨てず、昔からのものを保存しておくのです。
自宅を新築したり、アパートを作ったりはどのようなお金を使ったのか。自宅は長男がお金を出して名義は父親にしたとか。弟たちの結婚資金は誰がいくら出したか、妹の持参金はどうだったか。
◆長男としては、本当はこんな事書いて争いたくはないのです。
全ては両親の愛情から弟や妹に出したお金、自分が稼いだと言っても全て父親の事業のなか、誰のお金なんて区別は無く唯々みんなの幸せを考えただけなのです。
でも将来の相続対策のために今から10年後~30年後の為の対策として、資金の動きを記録しておくのです。兄弟喧嘩をしないで、財産を小分けにする家を護る為の予防策なのです。
投稿者: 税理士法人あけぼの
2014.11.10更新
★損益計算書的(その期間の動きを記録)発想で寄与分を重視・記録しよう。
今迄どれ程相続財産形成に寄与したかは、相続時思い出せるものではない。
その時その時に記録することが、相続争いの大事な援軍なのです。(寄与分①)
◆寄与分とはどのようなものか
相続人中に、被相続人(亡くなった人)の財産の増加や維持に特別の働き(特別の寄与)をした者がある場合に、相続財産からその寄与分を控除したものを相続財産とみなして各相続人の相続分を計算し、寄与者にその控除分を取得させることによって共同相続人間の公平を図る制度です。
戦後の民法改正で家制度が廃止され、家督相続から均分相続に移行し、相続人は法定相続分として、平等に相続財産を取得できる権利を与えられたのですが、当然平等という名の不公平から生じる具体的な不均衡問題が徐々に表面化してきて、昭和55年の民法改正時に新設された規定であります。
特に農家では、農業後継者以外の者が相続の放棄等の方法により、一子相続に近い形態での遺産分割が一般的に行われていた。しかし、戦後時がたつにつれ、相続人そのものの権利意識の変化、地価高騰その他の諸事情と合わせて、農業後継者以外の相続人から法定相続分に従った均分相続の要求が強まってきた。法定相続分に従って、相続人に均等に遺産を分割すると、被相続人と共に農業に従事し、農地を継承する為に働いてきた相続人が、均分相続により実質的には、多大な損失を被る例が増えた。その結果農業経営そのものの基盤をも脅かすという深刻な事態にまで発展するものまでみられ、相続争いの裁判でも寄与分を法的に制定すべきだとの意見もあり、民法改正となったのです。勿論これらは農家のみならず、中小企業経営者や一般の商店などにも同じ状況と言えるのです。
◆一般的には評価されないが妻の働きも非常に大きいのです。
夫婦財産制になったが、農家や自営業のように夫婦の労働によって得られた財産でも夫婦共有でなく夫名義にされることが多く、さらに、いわゆる共働きであっても、妻の収入によって得た部分までも夫の名義の財産にするといったケースがしばしばあります。
このような場合に、夫が死亡し、生前妻の収入によって得た財産までもが、夫の遺産に含められて遺産分割が行われると、実質的衡平が損なわれることは言うまでもありません。
この様な場合には、遺産分割の際に、ぜひとも寄与分の算定が必要となるのであります。
でもこれも記録しておかなければ主張するときには、何十年もの前のことを思い出さないのです。
一緒に生活し働いている時には、そんな事書くなんておかしいと思うのが一般的ですが、何もしないのに法定相続割合を主張する人が増え、それに弁護士先生という応援が入るから問題の解決が人情中心ではなくなってしまうのです。
◆寄与分を主張できるのは、相続人だけです。
残念ながら内縁の妻や事実上の養子など法律上の地位以外は、どんなに貢献していたとしても、寄与分を主張することはできません。相続放棄した者、相続欠格者及び廃除された者も寄与分を主張する資格はありません。だから内縁関係等の場合には、自分の貢献に応じた財産をその都度給料かお手当?で貰い、自分の名義でへそくりにしておかないと、いざというときに思いも寄らず泣くことになってしまいます。
投稿者: 税理士法人あけぼの
2014.11.03更新
★長男として「こんなこと」書きたくないが、争族の予防のために書いておこう。
長男として親と一緒に同居し、親と一緒に仕事をしたり、親の面倒を見てきた立場とすると、一々何をやってきたとか、どう親の面倒を見てきたなんて、記録して主張するなんて事はやりたくないことだと思います。
親子の情から考えれば一々損得で評価することは、従来の親子兄弟関係ではあり得なかったことです。
しかし相続時の兄弟喧嘩を考え、相続が争族になった時に他の兄弟から法定相続割合を主張されたときには、寄与分を如何に主張するかがポイントになります。
特に法定相続割合を主張されると、莫大な金額となるような場合や、自社の株式分割で経営権が脅かされたり、農地の分割で農業経営が出来なくなったりする等の恐れがある場合には、事前に争う準備をすることです。
◆イザの時の相続争いは、証拠が無い長男が不利である。
他の兄弟は遺産をどれだけ貰えるかに終始します。
これは親が亡くなった時の財産を調べ、金額的に評価し、法定相続割合を主張するだけです。
これには何の準備も要らず、唯々その時点の財産を調べれば良いのです。
もっと簡単に言えば財産を調べることすら要らず、「長男が相続税申告のために調べた資料」をそのまま使っても良いのです。
これで法定相続割合を主張されては、長男はたまったものではありません。
◆遺産分割対策は、会計的発想(貸借対照表・損益計算書)を持とう。
簡単に言えば、貸借対照表は、決算時点(相続時点)の財産の残高の一覧表です。
損益計算書は、ある一定期間の収入と経費の動きの一覧表です。
一般的な相続争いでの争点は、「その時点の財産・貸借対照表」での争いなのです。
そこで簡単に決着ができないため、寄与分とか特別受益とか遺留分とかを考慮すると言うことになります。
この時点でようやく過去の期間の出来事が関係してくるのです。
その時長男は、自分が親と同居してからの仕事とか、弟姉妹の結婚などの支援とか、介護とかなどの問題を思い出そうとするのです。
でも親が80才としたら、それ以前の多くの出来事なんか忘れてしまっているのが普通です。
調停や裁判でも昔の資料や証拠はないし、長男としてこんなに俺はしてきたとも言いがたいし、結局負けてしまうのです。
◆遺言書以外に損益計算書のような、「財産形成過程」の記録を残そう。
遺産分割の紛争回避準備は「遺言書」であるが、遺言書は財産をどう分けるかを書くものであり、
その時点の貸借対照表のようなものであります。
だからどのように財産を形成したか、長男としてどれ程貢献してきたか、親の病気や介護でどれ程の事をしてきたか、大きな支出の記録や収入や支出の明細を残すことで、貸借対照表的発想(相続時の財産の価値が中心)から、長男を護る損益計算書的発想(相続時の財産は誰が作ったり貢献したか)にすべきです。
具体的にどうするかは、このブログで徐々に書いていきます。
投稿者: 税理士法人あけぼの