仮に会社に対し5000万円の貸付金があり相続税率20%の場合、貸付金5000万円では、相続税1000万円になります。返済見込みのない貸付金で相続税が1000万円の負担になります。
このような無駄な相続税を払わない対策を考えてみました。
1.債権放棄
方法 貸付金を書面により放棄し、取締役会での議事録を作成します。
注)確定日付等で放棄した事実を確定する
メリット
①手続きが簡単
②費用が安い
③係る期間が短い
デメリット
①会社にとって債務免除益が発生する為、繰越欠損金がある場合は問題ありませんが、繰 越欠損がない場合や、債務免除額が繰越欠損額より多い場合は法人税が発生します。
②みなし贈与税が発生する場合があります。(債務免除により会社の株価が増加した場合)
2.会社に対する借入金を資本金に振替(増資)えて、その後減資する。
資本の増減資をすることにより、債務免除益のように損益取引にさせず、資本取引にすることで、 法人税の課税関係を無くすと共に、会社に対する貸付債権をも消滅させて、相続税も無くす対策 です。
方法 会社に対する借入金を現物出資する(登記が必要)
資本金の減資手続きをする(無償減資・登記が必要)
メリット
①会社にとっては債務免除益が発生しないので、繰越欠損金がない場合等でも納税が発生しない。
デメリット
①手続きが煩雑で面倒
②費用が高い(司法書士50万円位・税理士30万円位)
③手続き期間が長い(2ヶ月以上)
増資と減資が同じ会計期間に終了しない場合、一時的に法人市県民税の均等割が上がる
④会社の株式の評価によっては、贈与税が生じる場合がある
⑤この方法は現物出資になる為、借入金の時価評価をしなければならず、債務消滅益が発生する 場合がある (会社にとっては1の債権放棄と変わらない結果になる)
⑤の対策としては、以下の方法が考えられます
イ.役員が個人で銀行から増資分を借入れる
ロ.現金増資を実行する
ハ.会社は払込まれた資金で借入金を返済する
ニ.役員は銀行に返済する
この場合は、現物出資ではなく実際の現金で増資する為、時価で評価する必要がありません。
その為債務消滅益は発生しません。
また、個人で借入できない場合は、資金対策が必要となります。
繰越欠損金が大きい場合は、債務免除が簡単で手っ取り早いと思いますが、繰越欠損金がない場合は資本金に振替える方法がいいと思います。どちらにしても、それ以外にいろいろな問題が発生する場合がありますので税理士によく相談してから実行しましょう。
松井 稔幸