みなさまに、すこしでもお役に立てたら幸いです。
相続対策というと、いかに相続税を少なくするかということでした。そのため「資産の相続税評価額を圧縮する」「マイナス資産として債務を増やす」「法定相続人を増やして基礎控除額を増やす」が中心でした。私も以前建設会社と一緒に相続対策としてアパート建設を勧めていました。当時の私は、相続対策は相続税が減少すれば効果があるものと思っていました。そんなときアパートを建てた方の確定申告をしていて言われました。「なかなか入居者が入らず借入金を返すのが大変だ」と・・・・。確かに確定申告の不動産所得は大赤字で個人の財産を取り崩して返済していました。私が相続対策でアパート建築を勧めた方ではなかったですが、そこの建設会社が建設させたアパートです。なぜその土地がアパート建設に向いているかどうかもっと検討しなかったのか、建設会社に不信感を持ちました。
確かに、アパートを建てることによって土地の相続評価額を下げることが出来ます。また借入金をすることでマイナス資産が増えます。相続税は減少するでしょう。でも家賃収入が計画通り入らず自分の持っている財産で借入金を返済することは、結局自分の貴重な財産を実質的に減少させています。これでは相続税の節税対策になっても、正しい相続対策とは言えません。ましてや、アパートを建てたことによって、その土地を売却したくてもなかなかできません。相続税の納税資金がないとき困ってしまいます。
正しい相続対策とは、ご先祖様から預かった貴重な財産と自分が苦労して手に入れた財産をいかにスムーズに次世代に継承するかだと思います。またすべての財産を承継することは大変難しい時代です。残す財産として、収益を生む財産と利用価値のない財産をしっかり見極める必要があります。
相続対策は、相続税を減少させることだけでなく、財産をいかに残すかをもっと考えましょう。
松井 稔幸