2015年12月のブログで認知症になった場合相続対策が止まってしまわない為には「家族信託」が有効ですと書きましたが、それ以外にも対策があります。それは「任意後見人制度」です。
認知症になると、物事の判断が出来なくなり自分の預金口座からお金を引き出したり、アパートを建設したり、不動産を売却したりする契約を結ぶことが出来なくなります。相続対策も途中で止まってしまいます。そうなると本人も家族も困った事態になります。このようなとき困らないように、まだ判断が出来るうちに信頼できる人と後見契約を結んで置くことが出来ます。この後見契約のことを「任意後見契約」といいます。
後見人制度は一般的には、すでに認知症になってしまってから家族が裁判所に申立して後見人を選ぶ「法定後見(成年後見)人制度」を思い浮かべますが、この「任意後見人制度」は、認知症になる前に自分の信頼できる人に後見人を依頼する制度です。
任意後見の最大のメリットは後見人を自由に選ぶことと後見の内容を自由に契約出来ると言うことです。法定後見人(成年後見)は現在の裁判所の流れとして家族以外の人(弁護士・司法書士)を選択します。そしてこの成年後見人は、本人の権利・財産を守ることが目的となりますので、本人の財産を積極的に運用することは出来なくなります。例えば相続対策でアパートを建設途中の場合は、ストップしてしまいます。もし運用を望むなら前回話した「家族信託」の制度を利用したほうが使い勝手がいいと思います。また任意後見は、後見内容を自由に決めることが出来ますので、自分が将来どのように生活したいか相続対策をどのようにするかを、その内容を具体的に契約に記載することで、自分の思い描いた生活や相続対策をすることが出来ます。
しかし「家族信託」は信託された財産以外はカバー出来ないことになりますので、それをカバーするために「任意後見人制度」をお勧めします。この「家族信託」と「任意後見人制度」の2つを利用することで、将来認知症になったとしても安心していることができると思います。検討してみましょう。
松井 稔幸