家道とは収入財産に応じて我が家を維持する方法のことだ。
家を維持するのは易しいようだが至ってむずかしいもんだ。
まず早起きから始めて、勤倹に身を慣らすようにせにゃあいかん。それから農なり商なり、家業の仕方を良く学ぶことだ、それをしないで家を相続したんでは、将棋にたとえれば、駒の並べ方もよくしらないでさそうとするようなもんで、さすたびに負けて、結局は失敗するが目にみえとる。もしやむなくこの修行ができないうちに相続するようなことがあれば、親類や後見人などすぐれた人を師として、いちいち指図を請うて、それに従うのがよい。
これは将棋を一手ごとに教わりながらさすようなもんで、それなら間違いなはない。それをうぬぼれて、人に相談もせず、気ままにお金を使えば、たちまち相手にとられてしまう。父のこしらえた家を相続するのは、例えば、将棋の駒を他人に並べてもらったようなもんだ。将棋の道を知らんのに、すべて自分の思うままにさしたりすれば失敗するのは当たり前のことだ。